StanfordのContinuing Study Progaram DAY3を受講してきましたので、その内容のご紹介です。
DAY3はDAY2に引き続き、「説明」から「物語」への移行がテーマでした。説明ではdetailを描写していく事が大事であるのに対し、物語ではより自分がどのように感じたか、といったemotionalな内容を相手に伝え、共感を呼ぶ事が大事になってきます。
確かに、ネイティブの人間と話をしていると、自分の物語を語る人は多いです。そして、それを自分で行うのはとても難しいです。もちろん語彙、文法といった基礎力の問題もありますが、そもそも「会話の中で物語を語る」という文化になじみが無い事が大きな問題であるような気がします。自分自身を例にとって考えてみると、たとえ日本語においても、自分の経験をストーリーとして語る、ということはあまり行っておらず、従っていざ語ろうとしてもなかなか出来ません。想像ですが、物語を語る文化は、英語圏(もしくは米国?)を中心に発達しているのではないでしょうか。他所の文化圏からきた人間は「物語を語る」練習そのものをしないといけないと思いました。
ちなみに、他の受講生と話をしてみるとアジア系の受講生を中心に、「説明から物語への移行」には難しさを感じている人が多いように思います。よく一緒に練習をする中国出身の方(天安門広場事件直後に引っ越してきたそうなので、在米20年以上!)は、「コレは難しいのよねー」と盛んに仰っていました。もっとも、メキシカンなおじさんとインドからきたお兄さんは何ら苦もなくべらべら物語を語っていましたね。性格なのか、国民性なのか。。。
実際にやった練習は以下のような流れです。
- (ウォーミングアップとして)、2人一組で渡米前最終日について2分間で説明。パートナーは2分間聞いた後に2,3質問する。
- パートナーを変えてもう一度。
まさに、explanationとstory tellingの間のようなトピックを用い、物語への移行が自然にできるようにしています。もう一つの工夫が、パートナーからの質問です。質問に答えることで、自分の説明に何が欠けているのか、を知ることができます。結果として、2回目の説明において自ら修正を加える事が出来る、という流れです。
前のエントリにも書きましたが、この授業はコーチングとしてもとても工夫されているように思います。特に、練習を通して自分自身にフィードバックループが働くような仕掛けが随所に施されているのは秀逸です。ファシリテーションはコーチングを行う際には是非押さえておきたい技法だと思いました。
話を戻して、DAY3の練習の説明を続けます。
- 自分の家、オフィスまでの道順の説明。
この練習のキモは、説明時の主語にあります。大概の場合、"you need to take a bus"と言った案配で"you"を主語に使いますが、目の前のリスナー(=本来的なyou)は、実際にオフィスに行く訳ではありません。つまり、会話の中での主語として本来は第三者を表す言葉を用いる必要があるにもかかわらず、"you"を使う事で、臨場感を醸し出そうとしている訳です。DAY2の時に出てきた時制と一緒で、様々な工夫が無意識のうちになされているのですね。
- Story re-telling。 ネイティブスピーカーが物語を語っている内容を聞き、可能な限り話の内容を再現する。
これも興味深い練習でした。聞いた内容を詳細に再現するのであれば、本来的にはオリジナルの物語とほぼ同じぐらい時間がかかりそうなものです。極端に短い場合は、聞いた内容のdetailを理解できていない証明になってしまいます。これも、先ほどと同じくフィードバックループが練習の中に自然に組み込まれている例ですね。
最後にパートナーと共同で、DAY2と同様に物語を作成する、という練習を行いました。いかにオーガナイズされてわかりやすく、かつ詳細についても触れている物語を作るか、が大きなテーマとなります。DAY2では一人一人が物語を語りましたが、今回はパートナーとペアで物語を語る点が大きな違いです。察するに、お互いに協力し合う事でよりディテールを加えるとともに、よりエモーショナルに聞き手を引き込めるようにコンテンツをブラッシュアップさせる事が目的なのだろうと思います。毎度の事ながら、クラス設計の巧みさにはびっくりさせられます。
ここから先は「物語を語る」というスタイルの会話に関する感想ですが、私は「物語を聞く」という作業もかなり重要であり、かつノンネィテイブには敷居が高いと感じいます。大概の場合、物語のクライマックスでは、何らかの形で会話のスタイルががらりと変わります。このコースで学んでいるように、時制、主語が変わる、というのも一例ですが、会話の速度や、大きさといった、色々な要素ががらりと変わる様に思います。そして、物語を聞く側からすると、このスタイルの変化が大きいと聞き取りが出来なくなくなるのではないか、と。
そう考えると、話す側だけではなく、聞きとる側においても、「会話を語る」というスタイルに慣れるようなトレーニングが必要になのかなと思います。この「会話を聞く」ために必要な知識、聞くためのトレーニング方法については、講師と議論してみたいと思います。
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